2007年11月5日月曜日

ロスト・イン・トランスレーション
訴訟における通訳の重要性

「ロスト・イン・トランスレーション」をご存知であろうか (ビル・マーレイ主演、ソフィア・コッポラ監督)。来日した映画スター(マーレイ)がサントリーウイスキーの宣伝を撮影するシーンである。通訳を介して日本人監督とやり取りする場面は面白い。 通訳は、長々と語った監督の説明を一言の英語で済まそうとする。真剣に理解しようとするマーレイは、「あれ? 監督はもっと長くしゃべっていたように思ったけど…」と困惑する。


CMディレクター: ミスター・ボブさん、あなたは書斎にゆっくりと座っています。そしてテ-ブルの上にはサントリーウィスキーがあります。わかりますね! 感情を込めて。ゆっくりとカメラを見て。やさしく。そして、あなたの古い友達に会うように。言ってください、カサブランカのボギーのように。
「君の瞳に乾杯。サントリータイム」

日本人通訳:  Um, he wants you to turn, look in the camera. Okay? (彼は、振り向いてカメラを見ていただきたいそうです。よろしいでしょうか?)

Bob: That's all he said?  (彼が言ったのはそれだけ?)

日本人通訳:  Yes. Turn to camera.  (そうです。カメラの方を向いてください)

Bob:  All right. Does he want me to turn from the right or turn from the left?  (そうですか。右からと左から、どちらから振り向けば?)

日本人通訳:  あのー、彼の方はもう準備ができています。それで、あの、スタートがかかったときに、カメラの方に振り向くときに、左から振り向けばいいのか、右から振り向けばいいのか、そのへんのところはいかがなさいましょうか? というところなんですけれども。

CMディレクター: どっちだっていいんだよ、そんなの! 関係ないんだから、そんなものは! 時間がないんだよ。 ボブさん。 ね、だからもう早く、テンションあげて。カメラ見て。カメラ目線で。ゆっくりと。ね、パッションだよ。目にはパッション。わかった?

日本人通訳:  Right side, and uh, with intensity. Okay?  (右からです。集中して。よろしいですか?)

Bob:  Is that everything? I mean it seems like he said quite a bit more than that.  (それだけ? 彼はもっといろいろ言ってるように思ったんだけど)

CMディレクター:  あなたの言ってることはウィスキーのことだけじゃないんだから。わかる? 古い友達に会うように。やさしく、Gentlyにね。そして心からわき上がってくるテンション。それを忘れちゃダメだよ。

日本人通訳:  Like an old friend, and into the camera.  (古い友達のように、カメラを見てください)

Bob: OK. 

以上、映画「ロスト・イン・トランスレーション」より抜粋

日本人がアメリカの法廷で証言する場合、母国語である日本語での証言が認められているため、通訳を介しての証言となるのだが、ここで気をつけなければならないのは、「尋問(英語)→和訳→回答(日本語)→英訳」の過程で生じる”ズレ”である。全く違った文化背景から成り立つ2つの言語間では、 当然のように起きる問題だ。

日本人証言者は英語でされた元の質問に対してではなく、当然訳された日本語を元に回答するため、もしも、和訳の過程で”ズレ”が生じた場合、この証言者の回答はもしかしたら元の質問の意味からすると、ちょっと的のはずれた回答となっているかもしれない。 もしくは証言者の回答に対する英訳に”ズレ”が生じた場合、英訳された証言内容は、証言者が本来意図した意味とは違ったものになっている可能性がある。

例えば、「発明者とはどういう意味ですか?」 との質問に、供述者が「何かを考え出した人ということです。」 と答えたところ、通訳者が「someone who has thought about something.」(何かについて考えた人です。)と英訳したことがあった。一般的に”考える”を英語で言うと"think"だが、日本語で”考え出す”と言った場合、それはただ単に”考える”ということではなく、”新しい工夫・着想などを生み出す、考案する”ということであり、"think"よりも"design, create, figure out"などといった表現のほうがピッタリくる。「何かを考え出した人」と「何かについて考えた人」では、その意味がかなり変わってくることは否めない。

このように通訳ひとつで供述内容が変わってしまうことがあり、そして供述記録に残されるのは英語でなされた会話部分のみであることから、訴訟における通訳の果たす役割がいかに大切かということがお解かりいただけることと思う。

依頼人と弁護士のコミュニケーション手段

時代の流れとともに年々改良される交信手段。
言うまでもないが、どの時代においても弁護人・依頼人間のコミュニケーションには、最新の交信手段が用いられてきた。

  • 1840年ごろ・電信が広がる。
  • 1877年ごろ・電話の発明。
  • 1902年ごろ・太平洋に電信線が渡り、地球を一周。
  • 1935年ごろ・「テレックス」が広く使われる。
  • 1990年ごろ・携帯電話が広く普及し始める。
  • 1995年ごろ・電子メールが広く普及。
  • 2000年ごろ・ブラックベーリーの普及。
  • 2005年ごろ・VOIPの普及。

弁護人及び依頼人は、新交信技術誕生の度、情報漏えい等その安全性を懸念し導入に難色を示すものだが、時代の流れには逆らえず、いつのまにか使用するようになっている。

交信手段は将来どのように変わっていくのであろうか。