2007年11月2日金曜日

ワンポイント・アドバイス
供述がビデオに録画される場合

証人の供述がビデオ録画されると事前通知を受けた際には、事前に下記の通り手配することをお勧めする。

  • 個別モニターを手配し、定期的に映像を確認。
  • 必要であれば補助的照明を要求する。下向きの明かりの場合、目が陰になるケースが多い。
  • 音質を守る為、撮影業者にヘッドホンの使用を要求。
  • 証言者の背景は1メートルくらい離れた所に無地で無難な布を使う。
  • 目や顔が陰になっていないことを確認。
  • 顔の映りがぼけていない ことを確認。
  • 証言者の髪が薄い場合、光らないよう注意。
  • 真正面より少しずらした角度から撮影。
  • 回転椅子やロッキング・チェアを使わない。
一般的にな注意

  • 趣味よく鼻先に老眼鏡を乗せる人もいるが止めた方がいい。
  • 手で顔を触ったりしない。
  • 以前は証言者にストイックに、質問されたことしか言わない。単語1つで答えられるのであれば、それ以上しゃべってはいけないと述べたが、ビデオの場合、それは回避的に見えるので十分に答えているように見せる必要がある。(例えば、質問を言い換えるなど。)
  • 飲み物などはビデオに写らない場所におく。
  • 水は控えめに飲む(ボトルではなくグラスから)。
  • 証言者は弁護人を見て許可や指導を求めてはいけない。

男性証言者の場合の注意

  • 青いシャツ。
  • 目立つ宝石を止める。

女性証言者の場合の注意

  • 大きい模様のドレスを避ける。
  • 飾りは品よく。
  • 保守的な物を選ぶ。
  • ボディコンシャス、露出度の高いものは避ける。

ワンポイント・アドバイス 「企業供述」
最終回

以上で企業供述の大筋は分かっていただけたと思う。言うまでもなく、個々のケースにより臨機応変に対応することが必要であるが、少なくとも上記の点を押えておけば、今後の企業供述にあたり、心構えができるのではないだろうか。

ワンポイント・アドバイス 「企業供述」
⑥本番!反対尋問に崩れずしっかりと事実を供述する方法

質問を良く聞く。自分の知識で返事ができる否か。(供述に備えて習得した知識も含め)聞かれていることについて覚えているか否か。返事をする前に間を置き、弁護人に異議を唱える時間を与える。正直に答える。答え終わったらそれ以上しゃべらない。

例えば、「御社は栃木県にいくつ工場があるか」と尋問された場合には、「一つある」と答える。「一つあるが、同業他社に売却される噂ある。」とか「一つあるが、そこでは何も製造してない。」とか「一つあるが、最近工場長が解雇されたようだ」など、聞かれていないことまで答えない。

また、仮定的な尋問には注意が必要だ。例えば、「もしあなたの会社の製品を使用し、事故に遭い死亡した人が一人でもいたら、その製品をリコールするか?」のような仮定的な尋問は、事件を取り巻く様々な要因によって回答が多様化し、正確には答えられないため、弁護人が異議を唱える可能性が高い。(製品と事故には因果関係があるか、使用者が意図的に死亡したか、注意書きを無視して危険な使い方をしたかなどによって回答が変わる。)

こちらが答え終わった後、よく相手側弁護人がジーッと証言者を見つめ何も言わないことがある。これは心理作戦なので注意が必要だ。沈黙が続くと不快に感じ、不必要に証言を付け足してしまう証人が多い。
記憶が曖昧で答えられない場合に、何か言わないと悪いと思い、憶測的な答えを出すということがよくある。憶測は根拠のある推定とは違う。例えば、「あなたの目の前にある机の横幅は何センチ位か」という質問を受けたとしよう。これは、証言者の目の前に机があるため、根拠のある推定が可能と考えられる。しかし相手側弁護士が「私の事務所にある机の横幅は何センチ位か」と質問した場合、証人がその机を見たことがない限りは憶測でしか答えられないため、この回答は根拠のないもので不適切な回答と言える。

ワンポイント・アドバイス 「企業供述」
⑤企業弁護人との供述準備及び模擬尋問

供述者は企業側弁護人と以下のような内容について準備する。

まずは、段取りの説明。日時、場所、参加者とその役割(弁護人、通訳、速記者等)、相手側の素性などを説明する。ビデオ供述の場合には、表情やしぐさなど、外見的なことも詳しくアドバイスする。
次に、証言方法に関する基本的なアドバイスをする(正直に、憶測を言わないなど)。また、口頭異議の意味や目的などについても説明する。
そして、通知項目を逐次読み直し、供述者の知識を確認しながら、問題点や書類などをチェックする。
最後に模擬尋問を行い、相手側の高圧的な質疑等に対し、感情的になったり体勢を崩したりしないよう備える。


供述は「真実であり真実以外の何ものでもない」と宣誓することに始まり、宣誓してから供述が終わるまでの間、嘘をつけば偽証となり証人が罰せられたり、証言に矛盾点があれば弾劾される可能性がある。これを避けるため、充分な準備期間を取り模擬尋問をして本番に備える。


前述1で挙げた衝突事故の際、自動車のエアバッグが開かず怪我をしたBさんが自動車メーカーD社を訴えた例を再び見てみよう。D社の供述者が数年前に行なった別件の供述で、「当該車種を使ったエアバッグの実験はしていません。」と証言したにもかかわらず、今回の供述で「当該車種を使って実験しました。」と言ったとする。証言が変わったことに対し、Bさんの弁護人は、D社の供述の信憑性を問うため、後の裁判の際次のように弾劾する。「先程陪審員の前で、真実であり真実以外の何物でもないと宣誓したことを、もはやお忘れではありませんよね。もう一度確認しますが、エアバッグの実験はしていませんね。」もしここでD社証言者がこれを認めなければ、Bさんの弁護人は次のように反対尋問を行い、さらに証言の信憑性について追及する。
「2003年7月10日に、カリフォルニア州トーランス市マリオットホテル内会議室で供述したことを覚えていますね。今、私が手にしている紙は、その時の御社の証言記録です。もう一度ここで目を通しますか? その時も御社の証言者は今日と同じように、“真実であり真実以外の何物でもない”と宣誓しており、その時の証言は公式裁判速記者によって、全てここに記録されています。あなたは証言記録内容を訂正する機会があったにも関わらず、訂正しませんでしたね。このときの供述では、“当該車種を使ったエアバッグの実験はしていません。”と証言されています。しかし、これは先程おっしゃったことと矛盾しています。つまりあなたは嘘の証言をしたということです。」これに対し、被告側弁護人は反対尋問によって損なわれた証人の信頼を回復するため、反対尋問で取上げられた事項に関する再直接尋問を行う。

ワンポイント・アドバイス 「企業供述」
④供述者の事前準備

まず、企業側弁護人が当該事件の背景も含め、どのような点が追及されるのか、どのような書類について質問されるのかといったことを、企業クライアントに具体的に解説する。
それに対しクライアント側では、弁護人と相談しながら、上記2で述べたように供述者候補を検討し、必要資料を収集する。(多くの場合開示済みの書類を参照) 供述者が決定したら、供述者を通常の職務から解放し、準備に専念できるよう企業側が取り計らう必要がある。
また、関係者から話を聞く場合には、法務部を通した方が、時間的に効率よく準備を進めることができる。

ワンポイント・アドバイス 「企業供述」
③供述者の選択

企業の代理証言ということで、幹部や管理職を選任すべきと思われがちであるが、決してそのようなことはない。会社幹部が必ずしも事情に精通し、的確に供述できるとは限らないからである。また幹部を供述者とした場合、不要に貴重な時間を費やすだけでなく、マスコミなどの注目を必要以上に浴びてしまう恐れさえある。

したがって、技術的な証言の場合は設計者を、金銭的な項目なら経理担当者をといったように、通知の項目に精通している者を供述者として選任することとなる。また場合によっては、項目の内容ごとにそれぞれ二人以上の供述者を選任することもある。

しかし、通知項目について精通している者がいない、もしくはいたとしても何らかの理由で不適切だと思われる場合には、企業の関連書類等を考察したり、当時の事情に詳しい人物から話を聞くなどして、通知内容に関する必要な知識を取得し、企業を代表する証言が的確に出来るよう準備を整えることになる。

また、稀なことではあるが、従業員の中に通知項目に精通し、尚且つ的確な証言ができる者がいない場合、専門家等の外部者を選任し、供述できるよう準備することもある。供述者選任の基準はおよそ次の通りである。まずは、通知項目を熟知し詳細に渡り証言できる人物、追及されても動じない者、率直ながらも必要以上に喋らない者、そして、細かいことだが、癖が少なく愛想や見た目が悪くない人物を選任する。

2007年10月30日火曜日

ワンポイント・アドバイス 「企業供述」
②供述通知と異議申立

企業証言の第1歩は、原告が被告に対し供述通知書を送達することに始まる。これは通知の前後の文脈を説明すればわかりやすいであろう。
①先ず、原告が被告に訴状を送達する。続いて、被告は原告に答弁や却下申し立てなどを送達する。
②次に「開示」という事実調査の段階に入る。開示(discovery phase)には、大きく分けて2種類ある。文書による開示(つまり質問書や文章等の提出)と証言(供述)である。企業供述というのは、事実調査の一環としている証言録取書の一つである。

通知書の目的は、件名及び供述の日時及び場所を述べ、妥当な証言項目を明示することにある。
例えば、A社が「人種差別的不当解雇」を主張する訴訟に巻き込まれたとしよう。この場合、次のような通知項目が考えられる。「被告企業は、2005年及び2006年に、合計何人解雇したか。」「そのうち東洋人、白人及び黒人をそれぞれ何人解雇したか。」「不当解雇と訴えられたことが何回あったか。」などである。

このように、通知書に記載される項目は、クレーム内容または防御内容との関連性を明示すべきであり、「企業証言を取る」などの漠然とした通知は、供述項目が明白でないことから無効とみなされる場合がある。また、人種差別的不当解雇を主張しているケースで「企業の北米事業部における売り上げ」などという項目は、明らかにクレームとの関連性が妥当でないため、異議の申立ができる。項目内容の幅や期間があまりに広範囲に及ぶ場合にも異議を申し立てることができる。

通知に対する異議申立方法は2通りある。1つは事前に書面による通知却下もしくは項目限定の申立で、もう1つは供述の際の口頭による異議の申立である。

ここで供述に対する異議申し立てについて、特に注意して頂きたい点が2つある。
1つは供述日までに書面又は口頭にて異議申立をしなかった場合、その異議申立の権利は放棄したものとされるということだ。
もう1つは明示された供述項目に対して事前に異議申立をしなかった場合、証人が準備不足により「知らない」「分からない」などと答えると、企業が罰せられる可能性があるということである。つまり、供述項目の明示という原告の義務に対し、企業側では、その明示項目に関して証言者を「準備」する義務があるのだ。

ワンポイント・アドバイス 「企業供述」
①一般的供述と企業供述の違い

訴訟における「供述」(英語で「deposition」以下「デポ」とも略す)とは、宣誓の下、事件に関する証言をすることで、後の裁判及び審理において「証拠」となるものである。このデポの一種として「企業供述」がある。

一般的なデポとは、事件の当事者もしくは目撃者などが自ら知覚・記憶した事実を述べることで、証拠の一環となるものである。例えば、Aさんが赤信号を無視して交差点に入り、Bさんの運転する車に衝突したとしよう。怪我を負ったBさんがAさんに対して訴訟を起こし、Bさんの弁護人は、警察の事故報告書に記載されていた目撃者Cさんの供述を取ることにした。供述の際、Cさんは自分の見聞きしたことのみに関し真実を答える義務があるため、「Aさんは赤信号を無視して交差点に進入しましたね?」との質問に対し、もしAさんが赤信号を無視して交差点に入り、Bさんの車に衝突したのを見ていたのであれば、「はい。」と答えることになる。しかし、衝突現場は見たが、信号が青だったのか赤だったのかまでは覚えていないのであれば、「わかりません。」と答えることとなる。

これに対し「企業供述」は、企業が訴訟当事者として証言する権利又は義務が生じた場合に行われ、「企業としての知識」(corporate knowledge)を証言するものである。例えば、前述の例で、今度はBさんが衝突事故の際に運転していた自動車の設計欠陥で、エアバッグが開かなかったため怪我をしたという主張で、自動車メーカーD社に訴訟を起こしたとしよう。Bさんの弁護人はD社に対し、当該自動車のエアバッグ設計に関して企業供述をとることとなる。D社はエアバッグ設計に関し、正確かつ詳細に渡り証言できる個人を企業代表の供述者として選任する義務があり、選任された供述者は直接自分で見聞きした知識に留まらず、企業としての知識で供述しなければならない。つまり、Bさんの弁護人が「エアバッグの設計・製造段階で、どのようなテストを行いましたか?」と質問した場合、D社の供述者は、たとえ個人的にどのようなテストが行われたのかを知らなかったとしても、供述前に事件に関わる知識を習得し、これに対し答える義務が生じる。

ワンポイント・アドバイス
「企業供述」 実践編 序文

アメリカでビジネスを行う上で避けて通ることのできない訴訟。しかし、米国の法律や文化に馴染みが薄い上、言語の壁のある日系企業にとって、法廷での尋問は耐え難い緊張である。ここに、訴訟において特に重要な位置を占め、その結果に大きな影響を与え得る「企業供述・証言」(corporate witness deposition)について、匿名で実例を挙げながら6段階にまとめてみた。

①一般的供述と企業供述の違い
②供述通知と異議申立
③供述者の選択
④供述者の事前準備
⑤供述準備及び模擬尋問
⑥本番!反対尋問に崩れずしっかりと事実を供述する方法 。

この記事が少しでも訴訟の際の不安感を取り除き、緊張感を和らげる手助けとなることを望む。